アメリカの伝統的なファッションブランドといえば、真っ先に名前が挙がるのが Brooks Brothers(ブルックス ブラザーズ) だ。1818年の創業以来、200年以上にわたってアメリカンスタイルの礎を築き、歴代大統領や著名人に愛されてきた。今回は、その歴史や代表的なアイテム、逸話を交えて、ブルックス ブラザーズの魅力を紐解いていこう。
創業と歴史
ブルックス ブラザーズは 1818年、ニューヨークでヘンリー・サンズ・ブルックスによって創業された。彼の信念は、「アメリカ人のために最高の服を作る」こと。その精神は、現在に至るまでブランドの根幹を成している。
19世紀後半、ブルックス ブラザーズはアメリカ初の既製服メーカーとして名を馳せた。当時、スーツは仕立てるのが常識だったが、同社は高品質な既製服を提供することで、一躍有名になる。
1865年には、第16代大統領 エイブラハム・リンカーン が暗殺された際に着用していたコートがブルックス ブラザーズ製であったことも、ブランドの歴史に刻まれている。
代表的なスタイルとアイテム
1. ボタンダウンシャツ(ポロカラーシャツ)
ブルックス ブラザーズがアメリカンスタイルの象徴となった最大の要因が 「ポロカラーシャツ」 だ。
1896年、当時の社長ジョン・E・ブルックスがイギリスを訪れた際、ポロ競技の選手たちが襟をボタンで留めているのを目にし、これをヒントに 「ボタンダウンシャツ」 を開発。このシャツは瞬く間に人気を博し、現在もアメリカントラッドの基本アイテムとして定着している。
2. ノンアイロンシャツ

BROOKS BROTHERS
ノンアイロン ストレッチコットン ピンポイントオックスフォード カジュアルシャツ Slim Fit
1960年代、ブルックス ブラザーズは世界初の「ノンアイロンシャツ」を発表した。これは、アイロンがけ不要でシワになりにくいシャツであり、多忙なビジネスマンにとって画期的な発明だった。現在も同社の「Supima Cotton Non-Iron Shirt」は定番アイテムとして人気を誇る。
3. マディソン・スーツ
クラシックなシルエットの「マディソン・スーツ」も、ブルックス ブラザーズを代表するアイテムのひとつだ。シングルブレストでナチュラルショルダー、胸板の張りを強調したスタイルは、アメリカらしいスマートな印象を与える。
歴代の愛用者とエピソード
ブルックス ブラザーズは、歴代のアメリカ大統領や著名人にも愛されてきた。
- ジョン・F・ケネディ は、ボタンダウンシャツとネイビーブレザーを愛用。
- バラク・オバマ も就任式で同ブランドのスーツを着用。
- 小説家 F・スコット・フィッツジェラルド も常連で、『グレート・ギャツビー』の登場人物たちの装いにも影響を与えた。
特に、ハリウッド映画における「アメリカントラッド」のスタイルは、ブルックス ブラザーズの影響を強く受けている。『ウォール街』や『アメリカン・サイコ』などの映画に登場するビジネスマンのスタイルにも、そのエッセンスが息づいている。
現代におけるブルックス ブラザーズ
近年では、カジュアルなアイテムやコラボレーションラインも展開し、新たな世代にもアピールしている。例えば、ストリートブランド Supreme とのコラボや、モダンなシルエットのスーツラインの投入など、伝統を守りつつ進化を遂げている。
2020年に経営破綻したものの、新たなオーナーのもとで復活。現在もその歴史と伝統を継承し、アメリカントラッドの王道ブランドとして健在である。
まとめ
ブルックス ブラザーズは、アメリカントラッドの代名詞であり、その歴史とスタイルは今も多くの人々に影響を与え続けている。ボタンダウンシャツやスーツのシルエットなど、今日のファッションに残る数々の革新を生み出してきた。
「本物のアメリカントラッドを知りたいなら、ブルックス ブラザーズを一度は試してみるべき」——この言葉が示す通り、200年以上の伝統に裏打ちされたクオリティとデザインは、今なお色褪せることがない。