パナソニック、HOMETACT、YKK AP、それにガジェット系 YouTuber のマメさん。90分のパネルに並んだのは、ドアホンの会社と、賃貸マンションに家ごとスマートホームを入れる会社と、窓とドアの会社でした。話の中心にずっとあったのが、Matter対応という一語です。
私は会場で聴き、録音を文字に起こして読み直しました。登壇者の言葉は要旨で書き、数字は発表資料と公式の情報で確かめたものだけを載せています。紹介する機器のうち、私が手元で使っているものはありません。

1. 日本は、16%の手前にいる。
新貝さんは最初に数字を出しました。アメリカのスマートホーム機器の普及率は、2025年に49%。日本は、スマートホームを使ったことがある人が15.1%、別の調査で15.8%です。
新しい物が広く行き渡るかどうかは、使う人が16%を超えられるかで決まる、という考え方があります(キャズム)。新貝さんの見立ては「日本はようやく、その直前まで来た」。HOMETACTの橘嘉宏さんも、直前か、少し超えたところという見方で応じました。知っている人が65%いて、使っている人が16%に届かない。その差の理由として、スライドは「設定が難しい」「機器どうしがつながらない」「動かない」の3つを挙げていました。
2. アプリが増えるほど、不便になっていた。
Matterが出る前のスマートホームは、機器を1つ足すたびにアプリが1つ増えました。新貝さんが会場で話した手順を、そのまま並べるとこうなります。
新貝さんはこれをUSB Type-Cにたとえました。形がそろうと、誰でも挿せる。Matterが目指しているのはその状態です。古い規格の機器も「ブリッジ」を通せばMatterの仲間に入れられる。
3. 「Matterは脇役です」
Matterは、Google・Apple・Amazonが手を組んで作った規格です。新貝さんによると、いま約1,000社が加わっています。日本の会員は80社超、CEATEC 2026の共同出展は23社(前年比約2割増)でした。
そのうえで、新貝さんはこう続けました。Matterがやるのは「家の中で、つなぐところを安心して簡単にすること」だけ。その上で何をするかは、各社が競う領域として残してある。だから、ふだんは競っている会社どうしが同じ規格に乗れた、と。
新貝さんが提唱しているのが「Matter Ready Home」です。家を建てるときにMatterの口を用意しておけば、子どもが生まれた、親と暮らすことになった、という節目に、住む人が自分で機器を足していける。家は売って終わりの物ではなくなる、という話でした。
4. Matter 1.6で、かざすだけになった。
Matterは4歳です。新貝さんは、Wi-FiやBluetoothのロゴも、出た頃は何の印か分かる人が少なかったと振り返り、Matterのロゴも同じ道を行くと見ていました。
規格の側も進んでいます。2026年6月17日に発表されたMatter 1.6には、設定をさらに減らす変更が2つ入りました。
ただし、規格が出た日と、手元の機器やアプリが対応する日は別です。買う前に、機器と使うアプリの両方が1.6に対応しているかを確かめる必要があります。
5. 家の“頭”を、AIが取りに来ている。
AIの話では、各社が狙っているのは、家の機器をまとめて動かす“頭”の席です。
映画『アイアンマン』のトニーは、マーベルシリーズに登場する人工知能AI(J.A.R.V.I.S.)に、作業場の照明・音楽・機材を声だけで動かさせていました。いまは照明・空調・音楽・鍵まで、声ひとつで動かせます。『アイアンマン3』の、合図ひとつで待機中の全機を起動させる場面も、Matterのハブとスマートスピーカーの自動化で、家の機器を一斉に動かすシーンとして組めます。その頭に機器をつなぐ共通の口が、Matterです。
この流れに、事業者の側の迷いも出ていました。パナソニックの小笠原亮さんが Google Home と組んだ理由はAIです。いちばん賢いAIを作れる会社は、世界で片手で数えるほどしかない。そのAIと付き合わないわけにはいかない。けれど全部をそこに預ければ、自社で価値を出す場所がなくなる。だから自社は1段下の層で、自分たちだけが持つデータを使う小さなAIを作る——3つの層が重なる家を、小笠原さんは思い描いていました。
パナソニックの4つのテーマを、私が4枚に組み直しました。
製品名と発売時期は、10月6日時点で未発表です。
6. 15年で、家の“頭”は家の中へ戻ってくる。
新貝さんの整理では、「ハブでつなぐ時代」から「クラウドでつなぐ時代」、Matterを経て、家の中で完結するローカルAIの時代に入りかけています。YKK APの潮地良明さんは、日当たりや床・壁の素材など、ネットにつながらない物も住み心地を左右すると指摘しました。クラウドから見えない部分は、家の中のAIの役目、という見方です。
7. いま買うなら、箱のMatterの印を見る。
パネルの終わり近く、マメさんはこう話しました。スマートホームの知識がつくほど、Matterに対応していない製品は紹介しづらくなる。私の基準も、この一言に寄せます。箱にMatterの印があるか。使うアプリ(Apple ホーム・Google Home・Alexa)がその機器の種類に対応しているか。この2つを先に見ます。Threadの機器なら、もう1つあります。
「ブリッジ」を1台置くと、そのブリッジが対応する機器を、いまのまま Apple ホームや Google Home から呼べるようになります。SwitchBot のハブなら、SwitchBot の機器と、赤外線リモコンの家電の一部(対応する種類は公式で確認)を渡せます。
SwitchBot ハブ3 / Matterのブリッジに対応 / 価格はリンク先で確認
赤外線リモコンの家電をMatterに渡す入口は、ハブ3のほかに、Matter対応のハブミニもあります。Threadの機器を置くなら、家に司令塔が要ります。HomePod mini はその1台になります。
SwitchBot ハブミニ(Matter対応) / 赤外線リモコンの家電をMatterへ / 価格はリンク先で確認
Apple HomePod mini / Threadの司令塔になる / 価格はリンク先で確認
Google Nest Hub Max / Threadの司令塔になる / 価格はリンク先で確認
Matterの回はここまでです。古い電気錠をMatterにつなぐYKK APの話はVol.2、賃貸マンションに家ごと入れるHOMETACTの話はVol.3に書きました。
作中でトニーがJ.A.R.V.I.S.とF.R.I.D.A.Y.に出した指示を21件数え直し、2026年の市販品でどこまで届くかを1件ずつ突き合わせました。そのまま作れるのは7件です。 FIELD REPORT — CEATEC 2026 / HB-145 CEATEC 2026 取材 Vol.2 YKK AP20年使う玄関ドアに、Matterの口を付ける。 YKK APは、電気錠とシャッターのJEM-A端子をMatter … FIELD REPORT — CEATEC 2026 / HB-145 CEATEC 2026 取材 Vol.3 HOMETACT入居した日から、家が動く部屋が増えている。 HOMETACT(ホームタクト)は、賃貸マンションや分譲住宅にスマ … Apple HomeViewは、家の中心に置く7インチの画面です。顔を見分けて、一人ひとりの画面に切り替わります。日本は今回の予約の対象国に入っていません。それでも同じ日に日本で予約が始まった製品と合わせて見ると、家のどこまでをホームアプリにまとめられるかが見えてきます。
現実版J.A.R.V.I.S.の作り方2026 — Alexa+・HomePod・Geminiで家をAI化する

20年使う玄関ドアに、Matterの口を付けた。

入居した日から、家が動く部屋が増えている。

顔を見せると、家の画面が私の画面に変わる。
8. 画像の出典
- ① CEATEC 2026 公式サイトのキービジュアル(OGP 画像)(取得日 2026-10-15)。取り下げは、お問い合わせから。
9. 出典
- Connectivity Standards Alliance 日本支部「CEATEC 2026」出展の発表(2026年9月1日)
- MacRumors:Matter 1.6 の発表(2026年6月17日)
- 9to5Google:Google Home MCP(2026年9月16日)
- パナソニック:住宅用次世代防犯ソリューションの実現に向けてGoogle Homeと協業(2026年10月6日)
- Tom’s Guide:Anker が IFA 2026 で発表した MindBase(2026年9月)
- 9to5Google:UGREEN HomeAgent(2026年9月3日)
- 5 段階の整理:新貝文将さん(X-HEMISTRY)の会場スライド(2026年10月14日)をもとに、私が要約
- 普及率の数字:CEATEC 2026 HB-145 の会場スライド(Parks Associates/LIVING TECH協会/JEITA・電通の各調査)
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