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アプリを増やさない家は、Matterから始まる。

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FIELD REPORT — CEATEC 2026 / HB-145
CEATEC 2026 取材 Vol.1
MATTERアプリを増やさない家は、Matterから始まる。
Matter対応の機器は、箱のQRコードを読むだけで登録でき、Apple ホーム・Google Home・Alexa のアプリから動かせる作りです(機器の種類がアプリに対応していれば)。CEATEC 2026のパネル「AIホーム時代の幕開け」で、司会の新貝文将さん(X-HEMISTRY)はその Matter を「脇役です」と言い切りました。
✍️ STARK | 取材日 2026-10-14 | 確認日 2026-10-14

パナソニック、HOMETACT、YKK AP、それにガジェット系 YouTuber のマメさん。90分のパネルに並んだのは、ドアホンの会社と、賃貸マンションに家ごとスマートホームを入れる会社と、窓とドアの会社でした。話の中心にずっとあったのが、Matter対応という一語です。

私は会場で聴き、録音を文字に起こして読み直しました。登壇者の言葉は要旨で書き、数字は発表資料と公式の情報で確かめたものだけを載せています。紹介する機器のうち、私が手元で使っているものはありません。

CEATEC 2026 のキービジュアル(Transformation・10月13日から16日・幕張メッセ)
VIEW 00 — CEATEC 2026 のキービジュアル(出典:CEATEC 公式サイト)

1. 日本は、16%の手前にいる。

新貝さんは最初に数字を出しました。アメリカのスマートホーム機器の普及率は、2025年に49%。日本は、スマートホームを使ったことがある人が15.1%、別の調査で15.8%です。

ADOPTION — 使っている人の割合READ 01
アメリカ(2025年)49%スマートデバイスの保有率。スマートTVとスマートスピーカーを除く(Parks Associates)
日本・使ったことがある15.1%LIVING TECH協会「スマートホーム市場動向レポート2026」(2026年5月・11,003人)
日本・使っている15.8%JEITA・電通「Japan Smart Home Report 2026」。知っている人は65.5%
会場のスライドに示された数字。日本の2つは、どちらも普及の境目といわれる16%の手前

新しい物が広く行き渡るかどうかは、使う人が16%を超えられるかで決まる、という考え方があります(キャズム)。新貝さんの見立ては「日本はようやく、その直前まで来た」。HOMETACTの橘嘉宏さんも、直前か、少し超えたところという見方で応じました。知っている人が65%いて、使っている人が16%に届かない。その差の理由として、スライドは「設定が難しい」「機器どうしがつながらない」「動かない」の3つを挙げていました。

2. アプリが増えるほど、不便になっていた。

Matterが出る前のスマートホームは、機器を1つ足すたびにアプリが1つ増えました。新貝さんが会場で話した手順を、そのまま並べるとこうなります。

BEFORE — Matterの前の初期設定FLOW 02
メーカーのアプリ入れて起動するアカウントメーカーごとに作るWi-Fiの設定パスワードを打つスピーカーのアプリアカウントを連携
新貝さんによると、多くの人がこの途中でつまずく
AFTER — Matter対応の初期設定FLOW 03
箱を開ける本体にQRコードQRコードを読むいつものホームアプリで
機器の種類がそのアプリに対応していれば、Apple ホーム・Google Home・Alexa のどれからでも登録できる

新貝さんはこれをUSB Type-Cにたとえました。形がそろうと、誰でも挿せる。Matterが目指しているのはその状態です。古い規格の機器も「ブリッジ」を通せばMatterの仲間に入れられる。

3. 「Matterは脇役です」

Matterは、Google・Apple・Amazonが手を組んで作った規格です。新貝さんによると、いま約1,000社が加わっています。日本の会員は80社超、CEATEC 2026の共同出展は23社(前年比約2割増)でした。

そのうえで、新貝さんはこう続けました。Matterがやるのは「家の中で、つなぐところを安心して簡単にすること」だけ。その上で何をするかは、各社が競う領域として残してある。だから、ふだんは競っている会社どうしが同じ規格に乗れた、と。

LAYERS — 共通の口と、各社の体験MAP 04
Matterつなぐ口だけを共通にするブリッジ古い規格の機器も仲間に入れる
パナソニックドアホンと見守りカメラの防犯HOMETACT賃貸マンションに組み込むスマートホームYKK AP玄関ドアとシャッター
左が共通の部分、右が各社が競う部分。登壇した3社を当てはめた

新貝さんが提唱しているのが「Matter Ready Home」です。家を建てるときにMatterの口を用意しておけば、子どもが生まれた、親と暮らすことになった、という節目に、住む人が自分で機器を足していける。家は売って終わりの物ではなくなる、という話でした。

4. Matter 1.6で、かざすだけになった。

Matterは4歳です。新貝さんは、Wi-FiやBluetoothのロゴも、出た頃は何の印か分かる人が少なかったと振り返り、Matterのロゴも同じ道を行くと見ていました。

規格の側も進んでいます。2026年6月17日に発表されたMatter 1.6には、設定をさらに減らす変更が2つ入りました。

MATTER 1.6 — 2026年6月17日発表SPEC 05
01NFCで登録するスマートフォンをかざして登録する。天井の電球や壁の中のスイッチのように、取り付ける前に設定したい機器向け
02家族で1つのネットワークを共有するJoint Fabric。iPhoneの人とAndroidの人が同じ家にいても、機器をアプリごとに登録し直さなくて済む
マメさんは会場で、Wi-Fiのパスワードを探す手間がなくなると話した

ただし、規格が出た日と、手元の機器やアプリが対応する日は別です。買う前に、機器と使うアプリの両方が1.6に対応しているかを確かめる必要があります。

5. 家の“頭”を、AIが取りに来ている。

AIの話では、各社が狙っているのは、家の機器をまとめて動かす“頭”の席です。

映画『アイアンマン』のトニーは、マーベルシリーズに登場する人工知能AI(J.A.R.V.I.S.)に、作業場の照明・音楽・機材を声だけで動かさせていました。いまは照明・空調・音楽・鍵まで、声ひとつで動かせます。『アイアンマン3』の、合図ひとつで待機中の全機を起動させる場面も、Matterのハブとスマートスピーカーの自動化で、家の機器を一斉に動かすシーンとして組めます。その頭に機器をつなぐ共通の口が、Matterです。

SIGNALS — 2026年秋に出てきたものLOG 06
Anker が MindBase を発表(IFA 2026)。最大48TBまで家の中に保存でき、ローカルで動くAIを持ち、Matterのコントローラーにもなる家庭用のハブNOTICE 1
UGREEN が HomeAgent を発表。家の中で動くAIを載せたハブで、Matter対応の機器をいっしょに管理できるNOTICE 2
Google Home が MCP を公開(9月16日)。Claude などのAIエージェントから家の機器を動かせる。いまは米国の英語で、Google Home Premium Advanced の会員だけNOTICE 3
パナソニックが Google Home との協業を発表(10月6日)。ドアホンと見守りカメラに、Google Home のAIを組み合わせるNOTICE 4
MCPは、AIが外のサービスを使うための共通の口。メールなどに仕込まれた指示でAIに機器を動かされる攻撃(プロンプトインジェクション)への注意も、スライドにあった

この流れに、事業者の側の迷いも出ていました。パナソニックの小笠原亮さんが Google Home と組んだ理由はAIです。いちばん賢いAIを作れる会社は、世界で片手で数えるほどしかない。そのAIと付き合わないわけにはいかない。けれど全部をそこに預ければ、自社で価値を出す場所がなくなる。だから自社は1段下の層で、自分たちだけが持つデータを使う小さなAIを作る——3つの層が重なる家を、小笠原さんは思い描いていました。

パナソニックの4つのテーマを、私が4枚に組み直しました。

PANASONIC × GOOGLE HOME — テーマ 1

01. 怪しい動きを、映像から拾う

映像をAIが解析して、怪しい動きを捉える構想です。

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PANASONIC × GOOGLE HOME — テーマ 2

02. 家族の形で、通知を変える

共働き、高齢者のいる世帯、単身や二人暮らし。暮らし方によって、欲しい通知と提案は違います。家族構成に合わせて出し分ける構想です。

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PANASONIC × GOOGLE HOME — テーマ 3

03. 確かめる手間を、減らす

通知と確認の手間を、クラウドでまとめる構想です。

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PANASONIC × GOOGLE HOME — テーマ 4

04. 置いたあとも、変わっていく

更新とクラウドAIの進化で、設置後も機能が増えていくことを目指しています。

04 / 04

製品名と発売時期は、10月6日時点で未発表です。

6. 15年で、家の“頭”は家の中へ戻ってくる。

新貝さんの整理では、「ハブでつなぐ時代」から「クラウドでつなぐ時代」、Matterを経て、家の中で完結するローカルAIの時代に入りかけています。YKK APの潮地良明さんは、日当たりや床・壁の素材など、ネットにつながらない物も住み心地を左右すると指摘しました。クラウドから見えない部分は、家の中のAIの役目、という見方です。

新貝さんの整理 — 5 段階の 1

01. ハブ時代:無線の規格ごとにつなぐ

Zigbee や Z-Wave など、無線ごとに専用のハブを置く時代です。

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新貝さんの整理 — 5 段階の 2

02. クラウド時代:届かない所を束ねる

ハブの届かない所を、クラウドでつなぎます。Alexa や Google Home がここです。

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新貝さんの整理 — 5 段階の 3

03. Matter 時代:共通の言葉になる

メーカーをまたいで、同じ言葉で話せるようになります。

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新貝さんの整理 — 5 段階の 4

04. ローカル統合:家の中で束ねる

異なる規格の機器を、家の中のサーバーで束ねます。Home Assistant がここです。

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新貝さんの整理 — 5 段階の 5

05. ローカル AI:家を理解して動く

AIエージェントが、家の状態を理解して自分で動きます。

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7. いま買うなら、箱のMatterの印を見る。

パネルの終わり近く、マメさんはこう話しました。スマートホームの知識がつくほど、Matterに対応していない製品は紹介しづらくなる。私の基準も、この一言に寄せます。箱にMatterの印があるか。使うアプリ(Apple ホーム・Google Home・Alexa)がその機器の種類に対応しているか。この2つを先に見ます。Threadの機器なら、もう1つあります。

CHECK — 買う前に見る3つTASK 07
箱か本体にMatterの印とQRコードがある使うアプリがその機器の種類に対応しているThread の機器なら、家に Thread の司令塔がある
3つ目は、HomePod mini や Google Nest Hub Max など、Thread の司令塔になる機器が家にあるかどうか

「ブリッジ」を1台置くと、そのブリッジが対応する機器を、いまのまま Apple ホームや Google Home から呼べるようになります。SwitchBot のハブなら、SwitchBot の機器と、赤外線リモコンの家電の一部(対応する種類は公式で確認)を渡せます。

SwitchBot ハブ3 / Matterのブリッジに対応 / 価格はリンク先で確認

赤外線リモコンの家電をMatterに渡す入口は、ハブ3のほかに、Matter対応のハブミニもあります。Threadの機器を置くなら、家に司令塔が要ります。HomePod mini はその1台になります。

SwitchBot ハブミニ(Matter対応) / 赤外線リモコンの家電をMatterへ / 価格はリンク先で確認

Apple HomePod mini / Threadの司令塔になる / 価格はリンク先で確認

Apple HomePod mini
created by Rinker

Google Nest Hub Max / Threadの司令塔になる / 価格はリンク先で確認

Matterの回はここまでです。古い電気錠をMatterにつなぐYKK APの話はVol.2、賃貸マンションに家ごと入れるHOMETACTの話はVol.3に書きました。


JARVIS
CEATEC 2026 取材 Vol.2 YKK AP
20年使う玄関ドアに、Matterの口を付けた。

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JARVIS
CEATEC 2026 取材 Vol.3 HOMETACT
入居した日から、家が動く部屋が増えている。

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GADGET
HomeView Apple
顔を見せると、家の画面が私の画面に変わる。

Apple HomeViewは、家の中心に置く7インチの画面です。顔を見分けて、一人ひとりの画面に切り替わります。日本は今回の予約の対象国に入っていません。それでも同じ日に日本で予約が始まった製品と合わせて見ると、家のどこまでをホームアプリにまとめられるかが見えてきます。

8. 画像の出典

冒頭の画像

9. 出典

本記事で確かめた情報(報道を含む)

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