スマートホームを始めようとして、ハブを買い、アプリを入れ、家電を1台ずつ登録して、途中でやめた。そういう人は少なくないはずです。HOMETACTが入った部屋では、その手順を入居者がやりません。引っ越した日にアプリにログインすれば、部屋に付いている照明やエアコン、鍵が、もう動きます。
Vol.1 と同じパネルで、HOMETACTの橘嘉宏さんが登壇しました。数字は、会社の発表と、会場での発言を分けて書いています。

1. 4月に、会社になった。
HOMETACTは、三菱地所の社内事業として始まったスマートホームのサービスです。2026年4月1日から株式会社HOMETACTとして事業を始め、共同代表は松本太一さん(CEO)と橘嘉宏さん(COO)。橘さんはもともと不動産会社の出身で、パネルでは、不動産会社が採用しないかぎり、スマートホームは広がらないと言い切りました。
だから売り方は、入居者に直接ではなく、不動産会社を通して部屋ごと入れる形(BtoBtoC)です。外の会社への販売は2022年の後半に始め、いまは全国に広がっています。
2. 家賃の数字を、不動産会社は見ている。
経済的な効果がなければ、不動産会社は動かない。橘さんはそう言って、家賃の数字を映しました。会社の発表では、すでに建っている物件で、家賃が最大30%超上がった例があるとしています。会場では、家賃の査定サービスを持つ外の会社のデータで「16%」という数字も挙げました。
司会の新貝文将さんは、事業の立ち上げの頃の話を明かしました。アメリカでは「スマートホームにすると家賃が上がる」は当たり前に言われていて、何度もそう説明した。けれど橘さんは「日本は違いますよ」と返したし、取引先からは「入れて家賃が下がったら、誰が責任を取るの」と言われた。それから数年で、実際の物件で家賃が上がった例が出てきた、と新貝さんは振り返りました。
3. 入居者は、ログインするだけ。
HOMETACTの作りで入居者に関わるのは、ここです。機器は最初から部屋に組み込まれていて、入居者は自分で設定せず、ログインするだけで使えます。橘さんは、入れたあとも使い続けられることが家賃に表れる、と話しました。使われないスマートホームでは、部屋の価値は上がらない、ということです。
不動産会社の側も変わってきた、と橘さんは言います。2027〜2028年に計画されているマンションでは「スマートホームが入っていないとまずい」が、もうはっきりしてきた。どの地域でも、入れないと競争できない、と不動産会社自身が分かってきたそうです。新築の数は減っていくので、管理会社も「管理しているだけ」ではいられない。住んでいる間の価値をどう上げるかが、これからの一番のテーマだという話でした。
同じパネルで新貝さんが見せたスライドの内容を、私が 3 枚に組み直しました。
4. 次は、Matter。
HOMETACTはこれまで、ECHONET Lite や赤外線を使い、メーカーと1社ずつ交渉してつなぐ先を広げてきました。司会の新貝さんが開発の苦労に水を向けると、橘さんは笑って認めました。次の手がMatterです。昨年、Matterを決める団体の日本支部に加わりました。
AIの話になると、橘さんは少し身構えていました。今年9月のIFA(ベルリンの家電見本市)は「MCPの衝撃」だった、と。AIが家の機器を直接動かす口(MCP)を、各社が開け始めている。家の“頭”をみんなが取りに来ていて、「不動産屋が顧客接点と言っている場合じゃない」。HOMETACTは自前のAIを作る立場にはないので、MCPへの対応を進めて使い勝手を上げる方向に進む、という考えでした。
5. 部屋を探すときに、見ておくこと。
映画『アイアンマン』のトニーは、マーベルシリーズに登場する人工知能AI(J.A.R.V.I.S.)に、作業場の照明・音楽・機材を声だけで動かさせていました。いまは賃貸の部屋でも、照明・空調・鍵を声ひとつで動かすところまで来ています。
家ごと動かしたくても、賃貸の部屋では、壁に配線を通す自由がありません。だから、最初から組み込まれた部屋を選ぶか、配線の要らない機器で始めるか、の2つになります。
いまの部屋で始めるなら、壁に手を入れずに置けるハブが入口になります。家にある赤外線リモコンの家電の一部(対応する種類は SwitchBot の公式で確認)を、アプリから呼べるようにして、Matterのブリッジとして Apple ホームや Google Home にも渡せます。引っ越すときは、外して持っていけば済みます。
SwitchBot ハブ3 / 赤外線リモコンの家電の一部をまとめる・Matterのブリッジに対応 / 価格はリンク先で確認
Matterの規格そのものの話はVol.1、古い電気錠をMatterにつなぐYKK APの話はVol.2に書きました。
FIELD REPORT — CEATEC 2026 / HB-145 CEATEC 2026 取材 Vol.1 MATTERアプリを増やさない家は、Matterから始まる。 Matter対応の機器は、箱のQRコードを読むだけで登録でき、A … FIELD REPORT — CEATEC 2026 / HB-145 CEATEC 2026 取材 Vol.2 YKK AP20年使う玄関ドアに、Matterの口を付ける。 YKK APは、電気錠とシャッターのJEM-A端子をMatter … 作中でトニーがJ.A.R.V.I.S.とF.R.I.D.A.Y.に出した指示を21件数え直し、2026年の市販品でどこまで届くかを1件ずつ突き合わせました。そのまま作れるのは7件です。

アプリを増やさない家は、Matterから始まる。

20年使う玄関ドアに、Matterの口を付けた。
現実版J.A.R.V.I.S.の作り方2026 — Alexa+・HomePod・Geminiで家をAI化する
6. 画像の出典
- ① CEATEC 2026 公式サイトのキービジュアル(OGP 画像)(取得日 2026-10-15)。公式サイトの掲載画像を、出典を明記して使用しています。権利者からの取り下げのご連絡は、お問い合わせからお願いします。
7. 出典
- HOMETACT:株式会社HOMETACT の新会社での事業開始のお知らせ(2026年4月8日)
- 三菱地所:株式会社HOMETACT のお知らせ(2026年4月8日)
- Connectivity Standards Alliance 日本支部「CEATEC 2026」出展の発表(2026年9月1日)
- 売り切りから LTV への整理:新貝文将さん(X-HEMISTRY)の会場スライド(2026年10月14日)をもとに、私が要約
- 16%・35メーカー・670機種・45都道府県:CEATEC 2026 HB-145 での橘嘉宏さんの発言(2026年10月14日)
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